「蛇の穴」のまいです。
私の日々の生活を書きつづっていきます。
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08/06/07 天気予報の嫌いな女
NAO (2008/06/07 22:45)
バーのカウンター。
女性のお客「まち」が一人。
ビールを飲んでいる。
マスター:
おやおや、雨が降ってきましたよ。
まち;
また、雨なの?。いやね。
マスター;
梅雨だから仕方ないでしょう
まち;
また、傘買って帰んなきゃ。
まい;
傘、お持ちじゃないのですか?。
今日の天気予報は、雨でしたよ
まち;
わたし、天気予報みない派だもの。
おかげで、最近、傘ばっかり増えるわ。狭い家が、傘だらけよ。
マスター;
おやおや(笑)。
ジトジト雨が降ったら、家中、カサカサ。
これは、イケル。
まち;
茶化さないでくださいよ、マスター。
まい;
天気予報見れば、いいじゃないですか?
まち;
だから、私は、天気予報、見ない派だって。
マスター;
そんな派閥は、聞いたことがないですね。
まち;
派閥じゃないわね。私の主義!。
マスター;
私の個人主義ね。
でも、どうして?。
まち;
だいたい、天気予報に限らず、未来のことなんか、どうしてみんな知りたいわけ
まい;
私は、知りたいわ。
まち;
どうなるか分からないから、未来なんじゃないの
未来が、分からないから、人生って、楽しいんでしょう。
マスター;
なんか、哲学的ですね。
まち;
どんな小説だって、そういうことでしょう。
結末が、分からないから、どうなるんだろうかって、はらはらする。
マスター;
今度は、文学的ですね。
まち;
実は、私、幼稚園の頃から、お父さんが、帰ってくるのが、わかったの。
まい;
わー、すごい。
まち;
いつも忙しくて、帰ってくるのが遅いお父さんだったけど、夜中に寝ていても、お父さんが来るのがわかると眼が覚めて、お出迎えに行ったわ。
マスター;
よっぽど、お父さんが好きだったんだね。
まち;
そうじゃないの。
小学校に入って、友達が誘いに来る時間も、ぴったりわかったわ。
まい;
ますます、すごいじゃない。
まち;
はじめは、喜んでたお母さんも、毎日毎日、お父さんが帰ってくる時間に出迎えるようになると、不思議に思うようになったみたい。
ある日、「今日は、お父さんは、早く帰ってくるよ。晩ご飯の用意をしましょう」
って、お母さんに言ったら、
「あらっ、今日は、晩ご飯はいらないって出て行ったわよ」
と、知らん顔されたの。でも、6時過ぎに、ピンポンとなって、お父さんが、ひょっこり帰ってきたの。何でも、先方さんが、インフルエンザで、接待の食事会が、キャンセルになったんですって。
その時のお母さんの顔ったら、真っ青だったわ。
それ以来、お母さんは、私のことを気持ち悪がって、私を避けるようになったの。
まい;
かわいそうね。
私には、よく分かるわ。
まち;
どうしてよ。お母さんから、化け物扱いされて・・・。
こんな気持ち、分かる分けないでしょう。
マスター;
いや、世の中には、いろいろな人がいるからね。
まいには、まちちゃんの気持ち、わかると思うよ。
まち;
でも、あの日、お父さんに言われたの。
「まちは、お父さんが帰ってくる時間が分かるんだね。でも、誰にも、このことは言ってはいけないよ。たとえ、お母さんにもね」
って、言われたの。
それ以来、誰にも、話した事はなかったわ。
ああ、でも、何で私、こんな話をしてるんだろう。
まい;
天気予報の話からでしょ。
まち;
天気予報なんて、大嫌い!。
明日の天気なんて、知りたくないわ!。
マスター;
だんだん、分かってきたような気がするけど。
まち;
それから、しばらくしたあの日。
一週間ほど、胸が苦しくなって夜中に眼が覚めることが続いて、不眠症になったの。
ある朝、死ぬかと思うくらい苦しんだら、あの地震があったの。
そうしたら、お父さんは、出張先の神戸で、死んでしまったの。
それ以来、未来を見ようと思わなくなったの。
未来なんて、知らないほうがよっぽど気が楽よ。
まい;
お父さん、地震でなくなったの。
かわいそうに。
まち;
その点、過去のことは、気が楽ね。
過去は、変わらないですからね。
これが、お父さんの形見の宝石。
まい;
まあ、ちょっと見せて。さっきから、気になっていたのよ。
どう、これ、素敵でしょう。まみ?。
まみ;
(のそのそと厨房から出てくる)
わたしのこと、呼んだ。
まい;
ちょっと、見てあげて、この宝石。
素敵でしょう。
まみ;
(じっと見ているが、やがて、涙ぐむ)
熱くて、苦しそうだわ。かわいそう。
まい;
どうしたの。まみ?。
何か、見えるの?
まみ;
(苦しそうに)
押しつぶされて、焼け死んでる。この人。
まち;
(ぞっとして)
なんなの。この人。
気持ち悪いこと言わないでよ。
まい;
まみを悪く言わないで。
あなたの方でしょう。
変なものを持ち込んだのわ。
まち;
これは、父の形見だって。
死ぬときまで、身に付けていたの。
見せてって、言ったのは、そっちでしょ。
まみ;
かわいそう
(泣き続ける)
まち;
(まみを見つめながら、もらい泣きしはじめる)
お父さん。
・・・
お父さん。
苦しかったんだろうな。
まみ;
まち、まちって、呼んでたよ。
息がなくなるまでね。
まち;
ああ・・・。
(うつ伏せになって泣く)
コンクリートの瓦礫に押しつぶされて、苦しかったでしょうね。
私も、何回も夢に見たわ・・・。
(はっとして)
でも、どうしてそんなことが、あなたに分かるのよ。
まみ;
私には、見えるのよ。
まち;
どうしてよ。
まみ;
生まれつきよ。
まち;
う・ま・れ・つ・き?
マスター;
まみは、人が見えないものが見えるのだよ。
生まれつきね。
まち;
それって、おかしくない?
まみ;
どうして。
まち;
人に言っちゃいけないって、言われたことないの?。
まみ;
どうして。
まち;
だって。人と違っているとほら・・・
まみ;
ほら、何?
まち;
あー。もう、わかんない。
マスター;
わかんないことはないですよ
まい;
人と違っていても、良いじゃないの。
それが、私たちの持って生まれた力なんだから。
まち;
だって、お父さんが人に言っちゃいけないいって・・・。
まみ;
あなた、30過ぎて、何がお父さんよ。
まち;
どうして、30過ぎって、わかるのよ。
まみ;
だって、顔に書いてあるじゃん。
まち;
顔?。どこ?。どこ?。
やっぱり、目尻かしら?。
それとも、あごのライン?。
まみ;
(笑いながら)
顔見れば、分かるってこと。
まち;
顔見れば、分かる?。
まい;
そうよ。
空を見れば、明日のお天気が分かるようにね。
まち;
だって、天気予報って・・・。
まみ;
だから、空を見れば分かるって。
まち;
みんなわかるの?。
マスター;
まあ、僕は、あんまりわからないけど。
この二人は、わかるみたいだよ。
まち;
(じっと、考えてから)
実は、私も、分かるのよぅ。
まい;
でしょう?。
まち;
だから、それが今まで嫌だったの。
まみ;
どうして?。
まち;
皆がテレビや新聞の天気予報を一生懸命見てるでしょ。
でも、私は、空を見れば、明日のお天気くらい、だいたいわかるの。
自分には、当たり前にわかることを、世間の人は、どうして、大騒ぎして知りたがるのか、不思議だったの。
でも、本当のことを言うと、また、世間の人と違うって言われて嫌われると思って・・。
まい;
で、すっと黙ってたってわけ。
マスター;
天気予報お宅を、装っていたというわけだね。
まみ;
馬鹿みたい。30過ぎて。
まち;
30過ぎ言うな!。
まみ;
だって、30過ぎは、30過ぎでしょ。
馬鹿みたい。
まち;
馬鹿馬鹿言わないでよ。
(泣き出す)
マスター;
まみも、いい加減にしなさい。
この人も、悩んでいるんだから。
まみ;
馬鹿みたい・・・。
マスター;
まあ、そう泣かないで。
まち;
だって、30過ぎなんだもの・・・。
ちょっとくらい若いと思って・・・。
マスター;
まあまあ。
(泣く女にお手上げ)
まち;
(はっとして)
あっ、思い出した。この光景。
前に、見たことがある。
30過ぎって、若い娘にいじめられて泣いているときに、変な女が現れるの。
(突然)
まき;
こんばんは。
(入り口に、懐に子供を抱いているような感じで、立っている。びしょ濡れ)
まい;
あらっ、まき。
どうしたの。
まき;
この子が、雨が降ると、外へ連れてけって、うるさくて。
まち;
(心の中で)
ああ、あの時と同じだ。
まい;
赤ちゃん、元気そうね。
どれどれ、こっちに来て、顔見せて。
まち;
(再び、心の中で)
そうそう、この赤ん坊が・・・。
まい;
まあ、相変わらず、かわいい。
ちょっと、大きくなった?。
まちさんにも、見せてあげてよ。
まち;
(小さい声で)
来ないで・・・。
まき;
子供は、嫌いですか?。
やっぱり30過ぎだから?。
まち;
(ますます小さい声で)
年の話じゃなくてね・・・。
まい;
かわいいですよ。
まき、見せてあげて。
まき;
はい。
ばあ、やさしいおばさんでしゅよ。
ばあ。
まち;
(子供の顔を恐る恐る見る)
あー、やっぱり。
アザラシの子だ。
夢に見たとおり。
もういや。
(気絶する)
まき;
あらっ、気絶しちゃったよ。
どうしたのかしら?。
まみ;
やっぱり、変な奴。
まい;
思ったとおりね。
マスター;
今日の出会いで、こうなることを予知していたんだね。
そのことに気がついて、ちょっと、ショックが大きかったな?。
しばらく、そっと、寝かせておいてあげよう。
まい;
眼が覚めたら、まちさんと、仲良くなれそうね。
(終わり)

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